これからのキャリア発達モデル

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これからの
キャリア発達モデルとは

人生100年時代、VUCAそしてコロナ・・・。
かつてない変化が訪れるいま、私たちキャリアのこれから研究所は、
改めて日本におけるキャリアとは何か、人と組織が共に成長することとは何か、
を探求する「これからのキャリア発達モデル」を提唱いたします。
そして、現場の皆さまのリアルな声や、有識者の方々のご意見を
頂戴しながら、真に人間性が発揮され、成熟した社会をつくる基盤(OS)として、
育てていきたいと考えています。
どうか、皆さまの忌憚のないご意見をお寄せください。

9つのテーゼ

これからの
キャリア発達モデルが提唱する9つのテーゼ

自分の中の多様性・
複雑性を大切にしよう

つながりを感じよう

年齢を超えよう

複線と伏線を育もう

生産性と人間性を
両立させよう

あるべき自分とありたい
自分の両方を意識しよう

ビジョンとリアリティの
両感覚を磨こう

こころの成長痛(葛藤や違和感)
を大切にしよう

計画しつつも
アジャイルな行動を取ろう

9つのテーゼとは

自分の中の
多様性複雑性
大切にしよう

経験が映し出す自分を発見する

私たちは、「自分はこういう人間だ」と規定することで安心感、安定感を覚えるものです。しかし、その規定した自己のために、自分の可能性を狭めてしまうこともあります。そんな時は、人は想像以上に多様で複雑、かつ変化・成長していける存在であることを思い出してください(注1)。自分を窮屈に規定せず、狭めず、決めつけず。自分の願いに意識を向けると何が見えてくるでしょうか?

つながりを感じよう

自分や他者とのつながり、みんながいるから自分がある

私たちは、誰もがつながりの中にいます。つながりを感じられると、人は居場所を持つ感覚が芽生え、自分が自分であって良いと感じ、貢献意欲が育まれます。しかし、つながりを感じられないとき、自分のことでさえ他人ごとにしてしまうこともあります。つながりを感じる上で大切な要素の一つに、「自己受容」があります。自己受容とは、ありのままの自分を感じるということです。他者とつながるには、自分とのつながりを深めることも大切です(注2)。あなたは、自分と、他者と、つながりを感じられていますか?

年齢を超えよう

とらわれから自分を解放しよう

あなたは、自分の年齢に対してどのようなイメージを持っていますか?「自己ステレオタイプ化」と言って、人は周囲が自分をどう見ているかという「文化的イメージ」に自分を合わせてふるまいやすいそうです。この自己ステレオタイプ化というのは、「私は女性だから」「もういい年だから」「まだ〇〇だから」「〇〇を持っていないから」など様々な形でキャリア形成に影響を及ぼします。ぜひ、この自己ステレオタイプ化の影響を意識してみてください。あなたは、どんな型に自分をはめていましたか?本当は何をしたいですか?越えられる一歩は何でしょうか?(注3)

複線伏線を育もう

単線じゃなくていい。複線も回り道も全てが「物語」を織りなす

キャリアの世界でも有名な話が、アップルの創業者スティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学卒業式スピーチです。ジョブズは、大学の中退経験や、会社を解雇された時の頭を殴られたような失望経験を語っています。しかし「コネクティング・ドット」のように、後から点と点が線で結ばれて価値や意味を感じられる時が必ず来ることを強調しました。私たちの人生には、思い通りにならない紆余曲折が山ほどあります。また、最近では単線的にゴールを目指すより、あえて副業や越境(現業以外の活動)など、逸れてみたり、並行して2つ3つの専門性を得たりなど、多様な経験をしてみることの価値が見直されています。それらも含め、複線のキャリアでも後から必ず「伏線」になってつながるとしたら、あなたはどう感じますか?何をやってみたいですか?(注4)

生産性人間性
両立させよう

好きと好奇心のパワーから生まれるものは理屈を凌駕する

機械的に指示命令に従って作業をした方が生産性は高まる、と考える人もいます。しかし、そのような仕事はこれからさらにAIやロボットが行うことになるでしょう。これからの生産性は持続可能な価値を含むのだとすると、そこには人間であるが故に発揮される価値観や想い、共感やコミュニケーション、創造性やイノベーションがさらに求められます。人間性の発揮とは、一人ひとりが創意工夫をし、仕事や役割を創造するということでもあります。また、人間性の発揮が歓迎される組織や社会づくりも大切です。あなたの仕事に、あなたらしい人間性を発揮するとしたら、どんな工夫ができますか?

あるべき自分
ありたい自分
両方を意識しよう

このテンションがあるからこそ人生は面白い

仕事をする上で、「こうあるべき」と、「こうありたい」という姿の板挟みになることがあります。「べき」は多くの場合、他者の期待や、やらねばならないこと、周囲との規範や調整、生存のための行動などです。「ありたい自分」は内から湧き出る自由な好奇心や心からの願いです。他者視点と自己視点は両方大切で、行き来しつつ、視座が深化・拡大します。今のあなたは、それぞれをどう捉えていますか?

ビジョンリアリティ
両感覚を磨こう

この両者のテンションが人の創造性を育む

ビジョンとは、想像する理想の未来です。キャリアのビジョンを描くことで、アンテナが高まり、日々の行動が変わるという効果があります。しかし、同時に今現在の自分がどこにいるのかという現在地・リアリティに意識を向けることも大切です。現実の捉え方には主観が影響しますし、不本意な現実は見たくないものです。そこで、勇気を持って自己を見つめ、受け容れつつ、他者からのフィードバックを受けることが、現実を知る上で参考になります。ビジョンとリアリティの両方を持つことで、対処的・反応的に生きるのではなく、方向性を持って人生の舵取りをすることにつながります。あなたはビジョンとリアリティ、両方を意識できていますか?

こころの成長痛
(葛藤や違和感)を
大切にしよう

その悩みがじつは「大切なプロセス」なのかもしれない

成長痛が自然な反応であるように、こころの痛みや「もやもや・葛藤」などのゆらぎも成長する上で大切なプロセスです。悩み、停滞するということをネガティブに捉えると、逃げたり、追いやりたくなったりするかもしれません。しかし、それらを歓迎し、丁寧に観察し、何が心の中で動いているのかを味わうことで、気づきと成長が生まれます。あなたには、心の成長痛を大切にする時間や場所、または聴いてもらえる他者はいますか?

計画しつつもアジャイル
行動を取ろう

予測不能が多いから試しながら考えよう

バスケットボールの選手がゴールを決めるためには、シュートをすることが大切です。同じように、私たちも、想像や想定の世界で縮こまっていては、何も始まりません。動いてみることでわかる現実もあります。次のシュート角度や力の入れ具合を考えるきっかけも作ることができます。また、思いがけないアイデアが得られるかもしれません。何をやめ、何をやるのかも見えてきます。行動することで得られた情報をビジョンやリアリティに加えていくことで、実現可能性の高い計画が上書きされていきます。あなたの小さな最初のお試し行動は何ですか?

注1)心理学の研究では、「自己複雑性」を許せている人ほど心が安定していることも分かっています。また、日本人は本来多様な自己を受け入れやすい文化を持つとも言われています。

参考文献:木谷 智子・岡本 祐子(2015)「青年期における多元的な自己と アイデンティティ形成に関する研究の動向と展望」

LINVILLE,P. W. (1987) . SELF-COMPLEXITY AS A COGNITIVE BUFF ER AGAINST STRESS-RELATED ILLNESS AND DEPRESSION. JOURNAL OF PERSONALITY AND SOCIAL PSYCHOLOGY, 52, 663-676

JCDAの提唱する経験代謝では、自己概念を、自分と「自分を含む世界」をどう捉えたかという中にこそ自己概念が映し出されると言っています。

注2)アドラー心理学の提唱する共同体感覚を構成する概念として「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」があります。

注3)「自己ステレオタイプ化」とは、顕在化された社会的アイデンティティに沿って自己を評価・規定することです。自己ステレオタイプ化は、親密度の高い集団にいると回避されやすいことなどが分かっています。

参照:”SELF-STEREOTYPING IN THE CONTEXT OF MULTIPLE SOCIAL IDENTITIES” STACEY SINCLAIR UNIVERSITY OF VIRGINIA CURTIS D. HARDIN BROOKLYN COLLEGE BRIAN S. LOWERY STANFORD UNIVERSITY, JOURNAL OF PERSONALITY AND SOCIAL PSYCHOLOGY, 2006, VOL. 90, NO. 4, 529 –542

注4)ジョン・クランボルツ博士は、「ハップンスタンス・ラーニング理論」を通じて偶然の出来事や方向転換を歓迎しながらキャリア形成をする方法を提唱しました。

参考:「その幸運は偶然ではないんです!」J.クランボルツ著(2005)ダイヤモンド社

スティーブ・ジョブズ スタンフォード卒業スピーチ動画

研究会メンバー

齊藤 光弘

合同会社あまね舎代表

酒井 章

株式会社the creative journey代表

高橋 浩

ユースキャリア研究所代表

伊達 洋駆

株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役

水野 みち

株式会社日本マンパワー
/キャリアのこれから研究所所長

株式会社日本マンパワー

研究会メンバー

荒木美玄、五十嵐賢、和泉浩宣、
大恵英樹、岡島克圭、嶋美乃

※上記は2021年のスタートアップメンバーです。

その後のご参画・ご協力メンバーのお名前は記事などでも随時ご紹介していきます。